ホッブズは,とにかく人間が互いに互いをどう評価しあってどういう手に出るかという話を好んでする.これらは抜群におもしろい.ホッブズは論証にも熱心で,そういう面のおもしろさもあるが,やはり人間観察の秀逸さがおそろしく光るひとでもある.折に触れてちまちま紹介できたらよいと思っている.
マウンティングっぽい話をちゃんと考慮に入れている箇所をあつめてみたい.他にもいろいろあった気がするが,すぐに思い出せない.見つけたらここにリストしていく.
①武勇伝の競い合い
もし一堂に座して小咄を物語るという運びになり,うちひとりがおのれについて一発かましますと,残りのひともめいめい,われもわれもと競って,おのれについて語ります.もしひとりがなにかおどろくような話を物語ると,残りの人々もおどろくべきことを,手持ちにあれば口に出し,手持ちになければでっちあげるわけです.quod si accidat considentes historiolas narrare, vnus autem eorum de se aliquam proferat, vnusquisque caeterorum cupidissime quoque de se loquitur; si vnus mirabile aliquod narret, caeteri miracula, si habent, referunt, si non habent, fingunt. (De Cive, 1.2)